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「子どもと楽しむ善三展」ごあいさつに代えて

 現在開催中の「子どもと楽しむ善三展 〜善三先生こんにちは〜」では、主催者挨拶に代えて、みなさんにお伝えしたいメッセージを会場に展示しています。
「大人のみなさんへ。」と「子どものみなさんへ。子どもだったことのあるみなさんへ。」という二つのメッセージです。
少し長いですが、ここに転載しますので、ぜひ読んでみてください。
みなさんに何か伝わるといいなと思っています。


大人のみなさんへ。

 子どもには絵はわからないと思っていませんか?
 子どもに抽象画は無理だろうと思っていませんか?
 そんなことは決してありません。子どもたちは鑑賞の天才です。
 一例をご紹介します。「この線は、刀で切ったような線だと思いました。」「暗い中に一つだけ光があって、希望が見えたーっていう気になりました。」「心の底からぞくっとしました。」。これは、これまで坂本善三美術館で行った鑑賞教室の際に、抽象作品を見た6年生や中学校1年生の子ども達が実際に語った感想です。
 子どもたちは、なんの解説をしなくても、自分の言葉で、自分の心でじっくり見るだけで、その作品の本質を探り出します。そう、鑑賞の一番大事なところは、自分の心で感じ、自分の言葉で表現することなのです。
 大人の私たちはつい、誰かの言葉に頼ったり、自分の心にたずねることを忘れがちです。そんな大人たちはぜひ、子どもの力を借りようではないですか。
 今日は、ご自分のお子さんでも、お孫さんでも、近所の子どもたちでも、いっしょに絵の前に立ち、子どもたちの語りに耳をかたむけてみてください。
 そのときにはどうか、押し付けず、先取りせず、否定せず、待ってあげてください。子どもからどんな言葉が出てきても、それをくみ取り共感するためのフットワークだけ軽くしておいてください。子どもはどんなボールを投げてくるかわかりません。直球かもしれません。消える魔球かもしれません。野球のボールのつもりでかまえていたらいきなりバスケットボールを投げてくるかもしれません。
 きっとそれは、教科書に載っているような言葉ではないでしょう。もしかしたら、「きれい」とか「青い」とか「好かん(好きじゃない)」とか、ぶっきらぼうな答えかもしれません。あるいは、思わず聞き返しそうになるほど大人には予想もつかない言葉が並ぶかもしれません。そんな時は、その短い言葉をヒントに、絵の中を探り、子どもの心の中を探ってみてください。絵の中の何を見てその子はその言葉を発したのか。それを探ることは絵を見る一番の手がかりになるに違いありません。
 そして、絵を見てその言葉が出てきたその子の心に育っているものの果てしない広がりを、いっしょに垣間見せてもらおうではありませんか。


子どものみなさんへ。  
子どもだったことのあるみなさんへ。

ここは美術館の展示室。たくさんの絵がならんでいます。

絵を見る前にまず、思い出してください。
今日の朝、窓を開けたとき、ほっぺたに感じた空気の温度を。
今日の朝ごはんのにおいを。味を。

もっと思い出してみてください。
遠足の日の朝の気分を。
夜、星がいっぱい出ている空を見上げたときの気持ちを。
押入れの中のまっくらやみを。
プールの中で目を開けたときの様子を。
霜柱を踏んだときの感触を。
落ち葉が風に舞うときの音を。
春の森のにおいを。

なにか思い出しましたか。心の中でなにか動きましたか。

よし これで絵を見る準備はOK。
今日は、善三先生の絵をたくさん見てください。
ゆっくり じっくり 見てください。
ゆっくり じっくり 見たら、きっと何かが心に浮かぶでしょう。
あなたの心に浮かんだことは、あなただけのもの。
それは、誰かのと似ているかもしれないし、全然ちがうかもしれない。
それは、あなたの「心のひきだし」に大事にしまってあったもの。
それは、あなたがこれまで生きてきて、感じたり経験したりしたことのすべて。
ゆっくり じっくり 絵を見たとき、どの「ひきだし」が開くでしょうか。
「ひきだし」の中から出てきたものは、言葉にならないようなぼんやりした気持ちかもしれないし、ぴったりの言葉がなかなか見つからないかもしれないけれど、それをとなりの大人に話して聞かせてあげてください。
今日は何でも聞いてくれるはずです。